今回は、日本の社会福祉分野で数多くの著作を残している岡本重夫氏の理論による「社会福祉の対象」についてまとめます (=^ェ^=)
人が社会の中で生活していくには、社会が用意する基本的社会制度を通して充足する7つの「社会生活の基本的要求」が満たされなければいけない”
ー 岡本 重夫
社会福祉理論家において代表される人物である岡本氏は、生活について「生活者たる個人と生活環境としての社会制度との相互関係の体系」と規定しています。
つまり、個人(自分自身)の「社会生活の要求」を充足するために人は”基本的社会制度”を活用し、社会制度側もその均衡を保つために人へ「要求」をします。この相互関係性を「社会関係」と呼ぶのです。
では、「社会生活の要求」とはどのようなものなのでしょうか。
社会関係の内訳を見てみましょう。
社会生活の基本的要求 | 社会制度 | |
① | 経済的安定の要求 | 産業・経済、社会保障制度 |
② | 職業的安定の要求 | 職業安定制度、雇用保険 |
③ | 家庭的安定の要求 | 家族、住宅制度 |
④ | 保健・医療の保障の要求 | 医療・保健・衛生制度 |
⑤ | 教育の保障の要求 | 学校教育、社会教育 |
⑥ | 社会参加・社会的協同の機会の要求 | 司法、道徳、地域福祉 |
⑦ | 文化・娯楽の機会の要求 | 文化・娯楽制度 |
表のように7分類される社会生活の基本的要求には、それぞれ関連する社会制度が存在します。
そしてそれらはAからBといったような一方通行の関係性ではなく、相互の関係性であることがポイントです。社会制度の視点からは【客体的側面】、個人の視点からは【主体的側面】として説明されます。
A .客体的側面 | B .主体的側面 |
社会制度⇨個人〈役割期待〉 | 個人⇨社会制度〈役割実行〉 |
指定する試験を受けて入学し 定める単位の修得を求める | 役割期待に応えて、 決められた日数登校し 定められた授業を履修する |
しかし!
この〈 社会制度⇄個人 〉の関係性にはしばしば矛盾が発生します。その矛盾は以下の3つに分けられますので、早速見ていきましょう。
矛盾1:「社会関係の不調和」
個人の持つ複数の社会関係(客体的側面)が相互矛盾
学校に行かなければいけないが、体調を崩したので病院を受診したい。 診察可能な時間帯に受診するためには、どうしても学校を遅刻(早退)しなければならない
⇨ 教育と医療が両立できない
矛盾2:「社会関係の欠損」
基本的社会制度との社会関係を失った状態
子育てや介護の専念によって、就業を継続することができない。
⇨ある役割実行によって、別の役割実行を放棄しなければならない状況
矛盾3:「社会制度の欠陥」
一方向(客体的制度)からの要求を満たす役割しか持たない制度の存在
社会制度は全ての人の基本的要求を満たすように完璧に用意されているわけではない。主体的側面(個人サイド)から見たときに、ある要求を満たす制度が存在しないという場合も起こりうる。これを「欠陥」と表現する。
1と2は関係性の矛盾であり、3は制度そのものの欠陥について指摘しています。このように生活困難とは、主体的側面から見て明らかになる「矛盾」から生じるものなのですね。
最後に、今回のテーマである「社会福祉の対象」ですが、以下のようにまとめます。
冒頭で ”個人の「要求」を充足するために人は基本的社会制度を活用し、社会制度側もその均衡を保つために人へ「要求」をします。この相互関係性を「社会関係」と呼ぶ” と書きました。
この社会関係上の矛盾(生活困難)こそが社会福祉支援の対象となるのです。
ベーシックな内容ですが、今回はここまで。